潔さ

里山の厳しい自然環境に抱かれた、築35年のわが家。
長い間先送りにしていた外装工事に、ようやく着手する時が来ました。
景観は美しくも、
建物にとっては湿気や紫外線、土埃、樹液……戦いの連続だったはずです。
加えて、動物たちの暮らしとも隣り合わせ。
都市部に立つ住宅よりも痛みは早く、そろそろ限界が近づいていることを感じながら暮らしていました。

Before

After
外壁は、エスケープレミアムシリコンの指定色、3分艶で改修することに。
艶を抑えた穏やかな質感は、微かな光を内側に抱え込むような奥行きを感じさせてくれます。
雨で勝手に綺麗になるような機能はありませんが、
緻密な塗膜が汚れを定着させづらく、カビや藻に強いという実直な塗料。
里山での「白」は、ストイックな選択かもしれませんが、
景色・光を映し出す最高のキャンバスになってくれるはずです。

Before

After
屋根は棟換気を切り、カバー工法で改修。
カラーは、「銀黒」を選びました。

Before

After
破風・小庇は、屋根色に対してワントーン暗い色を入れていただきました。

そして、痛み・歪みともにだらしない印象を与えてしまっていた樋は、
タニタハウジングウェアのガルバリウム製に交換しました。
金属特有の硬いラインに、集水器は素直な形のT型ドレンに。
量産住宅の、良くも悪くも曖昧で優しい線をシャープな線に置き換え、
端正な形へと引き締めます。

仕事柄、改修工事には様々な選択肢があることは理解していました。
外壁には胴縁を打ち、付加断熱を施して板張りに変えることもできる。
やや大袈裟な玄関ポーチの吹き抜けには、軒天を張り、重心を下げて落ち着きを出すこともできる。
長いアプローチには、洗い出しが合うはず。
でも、
本当にそんなことが必要なのかと立ち止まりました。
住宅スケールに合わない天井の高いポーチは、
照明の高さだけを下げ、バランスを取れないか。
外壁も、癖のない素直な色・形をそのままに愛せないか。
「できること」を詰め込むのは簡単です。
しかし、既存の制約やセオリー、予算などを総合的に理解した上で、
白のキャンバスに、必要最低限の本物だけを添えた方が、
中途半端に手を入れるよりもかえって美しい場合もあるのではないでしょうか。

見せかけの装飾はいらない。
里山の深い緑の中に佇む、3分艶の白い壁と、端正な金属の線。
あっさりと、最小限の選択で揃える「潔さ」。
これが私が今回の工事で求めたものでした。
月末には、一点の真鍮ノブを配したオリジナルの玄関ドアが到着します。
これもまた、外壁を壊すことなく、最小限の工事で整える工夫を施しました。
「面」と「線」で整えたこの場所に、確かな「点」が打たれる風景について。
それはまた、別のコラムで綴りたいと思います。